CGとCVの日記

Computer GraphicsとComputer Visionについて

アルゴリズミック・アーキテクチュア

建築専攻でもないのですが,ふと,本屋で目に入った本を買ってみた.

アルゴリズミック・アーキテクチュア

アルゴリズミック・アーキテクチュア


原著はこれ
Algorithmic Architecture

Algorithmic Architecture


著者はKostas Terzidis, Harvard University Center for the EnvironmentのAssistant Professor of Architecture.

内容はもちろんアルゴリズミック・アーキテクチュアの話.
コンピュータを建築に利用する場合,まず思いつくのはCADなどを使ってデザイナが思い描いているものを3次元モデリングすることだと思う.
そういった予め概念化されたものをディジタル化する行為はコンピュータライゼーションといってコンピューテーションとは区別されている.
コンピューテーションとはデザインの意図,ルールなどの計算手続きを記述することであると述べられている.
また,作者はコンピュータと人間の関係についても触れている.作者によるとコンピュータは人間の使う道具ではなく,異なる論理体系をもったパートナーであるらしい.
例えば,パスワードを当てることを考えると,人間は周囲の情報を使って推測するのに対し,コンピュータはひたすら当てずっぽうに値を入れていく(アルゴリズムによるけど)
このように人間とコンピュータは異なる論理体系を持っていて,それをつなぐのがアルゴリズム役割である.

そして,コンピュータと人間でデザインを行うときに問題となるのが,デザインの定義だと思うのだが,
著者はデザインをすでに存在しているものの再発見であると述べている,(例えば,絵画や文章は無数の天文学的なパターンの組み合わせの1つに過ぎないという考え方)
優れたデザインに欠かせない「新規性」は”人間が考えもしなかった”というだけのことであり,それが存在しなかったわけではない.
したがって人間の「直感」や「創意工夫」とコンピュータの「計算能力」を合わせることが大切だと述べられている.

その具体的な例としてセル・オートマトン,GA,ブール代数による演算,フラクタル等のアルゴリズムが挙げられている.
そしてコンピュータを使うI世代の次に来るC世代(自分自身の手で運命を握るデザイナー/建築家)に期待したいと締めくくっている.



建築にコンピュータを利用するという話だと何年も前からやられているけど,それまでの流れとしてはめんどくさいことはエンジニアとかプログラマがやるので
建築家やデザイナが簡単にデザインできるツールを提供することが目的だったと思う.
それは逆にデザインの可能性を狭めていて,真にコンピュータと人間が協力するにはアルゴリズムを記述する必要があるけど,
最近はProcessing,Python,などいろんなスクリプト言語があってライブラリも充実してて敷居は低くなったと思う.
(著者はProcessingの本も出している)

Algorithms for Visual Design Using the Processing Language

Algorithms for Visual Design Using the Processing Language


デザインって言葉を聞くと自分には無理だって決めつけてたけど,すでに存在しているものの再発見って言われるとなんかできそうなきがしてきた(笑)
哲学的な内容から実装の話まで幅広い本でした.
個人的にはWolfram ResearchのStephen Wolframの話とか,アーサー・C・クラークの科学技術についての名言とか,セル・オートマトンとか(順列都市読んだばっかだから反応してしまう)
親近感のわく内容もあって楽しめました.